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映画『啄む嘴』清水崇監督トークショー 動画
劇場:池袋シネマ・ロサ
日時:2022年12月12日(月)21:00の回終了後
登壇者:清水崇監督、渡邉安悟監督、MC:吉見茉莉奈(中島役)
映画『啄む嘴』清水崇監督トークショー 文字起こし
吉見:ちょっとご挨拶をいただけますでしょうか。
清水:僕はホラー映画ばかり撮っている清水崇と言います。
吉見:『呪怨』ですとか、『牛首村』ですとかですね。
清水:これ、僕、真ん中でいいんですか?
吉見:もちろん大丈夫です。
清水:なんか尋問をうけるみたいだなと思って(笑)
会場:(笑)
吉見:今日はちょっとお話をいろいろお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
清水:よろしくお願い致します。
会場:(拍手)
渡邉:みなさま、本日はありがとうございます。本日はトークショー楽しみたいなと思います。よろしくお願い致します。
会場:(拍手)
吉見:先にちょっとお話ししたいことがあるんですけど、本作のチラシなんですけれども、裏にですね。一番最後の文章なんですけど、 「『リング』『呪怨』『回路』を超える新千年記Jホラーが誕生する!!」という、すごいことが書いてありまして。しかもこれは無許可で 名前をちょっとお借りしていて(笑)、何か、申し訳ございませんでした。
会場:(笑)
清水:いや(笑)むしろ光栄です。
吉見:そう言っていただいて、本当にお優しい。
清水:いいじゃないですか別に。みんなやってるし(笑)
吉見:ありがとうございます。
清水:でも大事なのは、見たお客さんが「どこが超えてんだよ」とか、「どこが『リング』だよ」とかって人もいるかもしれないし、「い や、マジで超えてきた」って人もいるかもしれないしって事だから。
吉見:いや、本当にありがとうございます。
清水:その3つがこえるべき映画かどうかというところも問題だよね(笑)
会場:(笑)
吉見:というかね、もおう比べるのもおこがましいというか。そもそもこれがこの作品がホラーなのかってところも含めてちょっとお話したいなと思います。今、清水監督も劇場でご覧いただいたという事で、まずは率直な感想をお聞きしたいなという感じなんですけれども。
清水:結構最近僕も色んな映画を初めて劇場で見て、直後に監督とトークとかあるんですけど、今日のこれは本当に難しいですね。最初の数カット見ただけでね、「あ、これやたらストイックなやつだ」って匂いを感じたんで、普通に観客として見させていただいたんですけど。何を考えてんすか?(笑)
渡邉:多分まずホラーかどうかというところだと思うんですけど、出来上がってまずサスペンススリラーという気持ちで自分はいます。ジャンルとして。で色んな方からの意見をもらって、結構難解に受け取られることが多いんだなって思ったんですが、僕としてはそんな難解に撮ったつもりもなくてですね。少しヒントとして(中島役の)吉見さんと話していて思ったことがありまして、登場人物の二人の女性の関係性に絞って観てもらえれば、より作品の輪郭が見えるのかなと思いました。本当に切実に何かを訴えているけど、言葉がまとまらず何を言っているのかは分からないけれど、何かを訴えている女性がいて、それを近くで見守ってじっと側で話を聞いて、その言葉を理解しようとする訳ではなく、ただただ側に居て、抱き締める。そういう二人の話。というところを中心に見ていただけたらいいなと思います。色んな要素があって、難しいと思う方もいると思うんですけれども、その二人の関係性に絞ってみれば、より話がわかりやすく入ってくるのかと思います。
吉見:私も正直、脚本を読んだ時確かに、
清水:なんか二人、恨み抱かれてます?(笑)なんか上映中もこの音鳴ってて。 ※劇場の地下駐車場の工事音が響いていました
吉見:え、本当ですか?
清水:そうなんですよ。うるせぇなと思ってて(笑)いや僕だけに聞こえる音なんだったら、作品の雰囲気に相まってるなと(笑)それか監督が恨みをかわれているか。後でロサ(劇場)の人に言って確認しましょう。
吉見:本当に怖い話なのかどうか、原因究明して後でご報告させて頂きます。
清水:藁人形とかあったりしてね(笑)
渡邉:それは本当申し訳ありません。
清水:いえいえ。
吉見:それで話を少し戻させていただくんですけど、私も最初読んだ時、最初文字ベースで見るんで。出来上がって初めて、撮り方が複雑なので難しく受け取られるというのはわかるんですが、文字ベールで見ると矢崎と中島の二人のお話なので基本的にはそう映るというか。私はそう捉えていたので別にそこまでというか。途中ちょっと支離滅裂なこと言っていたりとかはありますけど。ただまあ、そういう人とそういう人が出会って受け入れられたというか。一緒にいるのが大丈夫な二人が出会って、一緒にいたっていう話かなって思ったんですけど。(清水監督は)この作品をどういう作品だと捉えたんでしょうか?
清水:どういう作品…薄気味悪い作品。
渡邉:その薄気味悪さが伝われば、僕としては。
清水:うん。なんかそれでいいのかなって途中から思ったんですけど。
渡邉:(頷き)
清水:すごいストイックな作品で、理解しようとするのを突然やめたんですけど。なんかそれでいいのかなって、思ったんです。
渡邉:(頷き)
清水:ただ監督とこう、(吉見さんとの)二人のさっきの話を聞いてもっとわかんなくなった(笑)何言ってんだろうこの人たちって(笑)
渡邉:えーと…(笑)その前提として、僕はこう、分からない快感みたいなところに行けたらいいなと思っていて。
清水:今度はどういう意味ですか?(笑)
渡邉:そうですね(笑)清水さんの今の感想はその通りだと思っています。わからないけど、なんか惹きつけられるみたいなところですかね。それはこの映画に関わらず、自分の映画はずっとそういうところで撮ってます。
吉見:だから監督として、自分はわかるからといって撮った作品ではなくて、意図的にわかりづらくしたという部分があるということですかね?
渡邉:わかりづらくはしていないんですけど、わからない快感ってのはあると思っていて。わからないけど、何か惹きつけられてしまう。例えば、中島が途中わーっと喋るシーンがありまして、自分の過去について語っていくんですけれども、語れば語るほどわからなくなっていく。どんどん遠いところに映画が行くという、そういう観客と映画の距離感みたいなところを楽しんで頂きたいなと思います。
清水:渡邉さんはさっき名前が挙がった『リング』『呪怨』『回路』とあったら『回路』がお好きですか?
渡邉:あ、でも僕はオリジナルビデオ版の『呪怨』も大好きで
清水:あ、そういうのいらないんで(笑)
全体:(笑)
渡邉:はい(笑)
清水:今だから言っていいと思うんですけど、『回路』が作られた時に大映さんて会社があって。(『回路』は)大映さんが角川さんと一緒になる前に作った映画なんですけど。その大映のプロデューサーと一緒に別のをやってたので、色々相談とかされたんですよね。『リング』とか『呪怨』とかが流行った後で、黒沢監督が当時のスターや旬の俳優さんを使って、なんかとんでもないホラーを作ってるっていうのを聞いてて。黒沢さんは黒沢さんで。「いやぁ僕も『リング』みたいなの真似して作っちゃったよ」って言ってたんですけど、出来上がったのは全然違うし(笑)大映のプロデューサー陣が誰が読んでも、脚本の意味がわからないってなってて(笑)
清水:なんかインターネットの世界につながって、そこで地獄の扉開いてしまったらしいみたいなところのお話まではわかるんですけども、そこから監督に追いつくために色々聞いても、誰も理解できない。これはちょっと監督にお任せするしかないって言って、出来上がったっていうのを聞いて。でそのプロデューサーからこっそり呼び出されたんですよね。で「わからないんです…清水さんちょっと観てもらってもいいですか?」って言われて(笑)で試写に行ったらだだっ広い会場に僕一人の試写で(笑)
会場:(笑)
清水:正に今に近い状況で、「どうですか?どう思いましたか?」って聞かれて(笑)これはどういう映画かってのを一言で言えないものを孕んでいる不気味な映画だと思って。これは説明が難しいよなって思いながら、彼らも困っていたわけです。制作陣にどう説明していくか、どう売っていくかというところで。ただあの不気味さが大好きな人はいるんです。僕もその一人なんですけど。たまにあそこにハマる人いると思うんです。もしかしたらそういう影響を受けていたり、黒沢監督と同じような脳のシステム構造をお持ちなのかなと。ワンカットも無駄がないじゃないですか。すごく緊張感もあるし。
渡邉:そうですね。黒沢さんはすごく尊敬する監督です。『回路』に限らず、『CURE』もですし『勝手にしやがれ』シリーズもですし。
清水:すごいですよね。日本で一番カンヌにウケがいい。
渡邉:そう思います。そこで影響を受けてる部分が強くあると思います。
清水:いいんですよ(笑)受けてなかったら受けてないで(笑)
渡邉:いやいや(笑)
清水:もうね、信じられないんですよ(笑)この人(渡邉監督)が何を言っても(笑)
吉見:ちなみに、渡邉監督は本当に清水監督の作品がお好きみたいで(笑)
清水:大丈夫ですか?(笑)
吉見:本当、それはさっき補足したかったのですけど。
清水:僕、このあとテレビがいっぱいある部屋に監禁されませんか?(笑)
会場:(笑)
渡邉:僕は本当に(清水監督の)『犬鳴村』が大好きで、「これすごいですよ」って色んな人に伝えてました。必死で。
清水:ありがとうございます(笑)でもね、先ほどはサスペンススリラーって仰いましたけど、ホラーって言っちゃうとそれだけで見ようとする気持ちを無くしてしまう方もたくさんいるので、どう出るかってのは大事なんですよね。前面に。
吉見:私は撮ってる時も全然ホラーだとは思ってなかったですし、改めて観てもホラーって言っていいのかわからない感じなんですけど、改めて清水監督はホラーの定義ってなんだと思いますか?
清水:知らないっすよ(笑)
会場:(笑)
清水:僕もホラーじゃなきゃダメですか?とか、ホラー映画以外も撮りたいとか言ってるんですけど、なんで同じ人に同じようなものを求めるのかなって思います。『呪怨』みたいなの撮ってっていうなら、何回でも『呪怨』観ればいいじゃん。って思っちゃうんですよ。やっぱり自分はなるべく新鮮に新しいこと楽しみたいので、同じホラー映画でも、なるべく毎回今までにやってないことに挑戦したいと思って作ってはいるんですけどね。結構難しいんですよ。『羊たちの沈黙』みたいなモンスターも幽霊も出てこないけど、怖さであれはもうホラーですよっていう人もいるし。
吉見:そうですね。
清水:スリラーとかサスペンスって何が違うんですかって人もいるし。そもそもジャンル分けって観る人にわかりやすく、観やすくするためでもあるし、宣伝のための文句でもあるわけです。
吉見:なるほど。
清水:でも最近そういうカテゴリーに入りづらい映画っていうのも増えてますよね。A24制作もそういう作品多くて、でもどれも緊張感漂ってて世界的なブランドになりつつありますよね。
吉見:はい。
清水:だから難しいですよね。監督が言わんとする、別に難解にするつもりは無いっていうのはすごくわかります。伝わんなかったか、って時もあると思うんですけど、伝わんなかった人にあれこれ説明することほど、監督って格好悪いことないんですよね。あんまりねベタベタ説明したく無いじゃ無いですか。でなんでわかんないんですか、って言っても初見でわかんなかったんだからどうしようもない(笑)ただ何かが伝わっただとか、何か思ったことがあったら嬉しいですよね。
渡邉:そうですね。今おっしゃられていた薄気味悪さみたいなのが伝わればいいなと思いますね。それでも伝わっていると思います。
清水:これ多分後で見直しても、僕には変なノイズが聞こえてくるんだと思うんですよね(笑)
会場:(笑)
清水:渡邉監督はこの映画をどういう風雨に、俳優さんに、二人の女優さんを中心として色んな方が出てくると思うんですけど、カメラマンさんやスタッフ全員にどういう風に伝えられてたんですか?
吉見:それがですね、実はそこに関してはあまりすり合わせしていなくて。
清水:素ですか?
吉見:素ではないんでけども
清水:素だったらやばいやつですよね(笑)
吉見:さすがにああいうことは言わないと思うんですけども。でもわかんないですよね。人によったら吉見さんおかしいこと言ってるみたいなことはあるかもですし。ちなみにあの長台詞はオーディションで読んだんですよ。
清水:あぁ。書いてあったのを暗記して?
吉見:そうですね。まるっきりあの長いやつ演じて、選んでいただいたんですが、それは監督が演出をつけてというよりはオーディションの時の私の方向性を見て選んでくれたって感じですか?
渡邉:そうですね。それこそ黒沢さんの影響もあるんですけど、僕の中でキャスティングの時点で大体こう好きな人をキャスティングして、キャスティングも結構時間かかっちゃうんですけれども、現場ではなるべく簡潔に動線とか、(演技を)ちょっと押さえてとか、ちょっと大きくとか、そういうところですね。あと小道具をどう使うかとか、そういうところを俳優さんに伝えて、それは完全に黒沢さんの影響ですね。そっちの方が自分はやりやすいなと思って。
清水:どちらかっていうとだから描かれた人物のセリフがあって、それをその人がどう捉えて、どう読み取って、どう認識してくれてるかっていうその感じが一番近いと思うからそこを選んでいると。
渡邉:そうですね。
清水:だから現場では多少記号的にってかんじですね。
吉見:まさにおっしゃる通りで、私はあの長台詞を読んだときに中嶋の気持ちがわかるって思ったんですけど、私がわかるって思った通りに読んで、ほぼほぼオーディションから撮影まであまり期間がなかったので、そのままの方向性で行って、なんかあんまりいっぱい人とコミュニケーションをとって得する役では無かったので、監督とも最低限のコミュニケーションしかとってなかったかんじです。なので演技としては、それぞれの役で捉えている方向性でやったっていうところが近いと思います。
清水:他の俳優さんとかも同じ感じなんですか?
渡邉:人によっては変わってきますかね。謎男さんとかは結構話し合いをしたのかなと思います。
清水:そうですよね。
渡邉:ただ吉見さんも、間瀬さんもオーディションの時の振る舞いや雰囲気がバッチリだったのでそこでキャスティングしましたね。
清水:そこが羨ましいですね。
吉見:羨ましいというのは?
清水:最初から商業ベースで、制作も配給もついているので。僕も自主映画とか作ってたんですけども、映画が大きくなってくると、やっぱりそこは変わってくるんです。
吉見:なるほど。
清水:この人でいってくれないかってことになることもあるし、跳ね返しちゃう時もあるんですけど、でもどんな人がきても俺はやれるっていうのも欲しいですよね。
吉見:そうですね。
清水:それも大事なことで。でも受け入れたからにはその人信じてやらないといけないし。信じられ得ない時もあるけど(笑)シネマ・ロサだからぶっちゃけますけど(笑)
会場:(笑)
清水:大丈夫かこいつってなる時もありますよ(笑)
吉見:今回に関しては監督がキャスティングに結構時間かけて選んでくれたので、こっちとしても信頼してくれているというのが始まりだったんですけれども。監督が選んだ場合じゃなくて、現場に行ったら結構俳優側も不安というか、信じてくれているか分からないので。
清水:しかも何も言ってくれないひとが多いじゃないですか。僕もたまに「大丈夫ですか」って俳優さんにいわれて、ちゃんと声かけてあげなきゃ思います。
吉見:確かに。そこの関係性ができてない時点でそうですよね。だからその辺りはお互いに大変というか。
清水:日本人ってお行儀いいし、静かじゃないですか。静かに聞いてくれるし、笑いも堪えたり、怖がるのも堪えたりだから、作った側からするとお行儀いいのはいんですが、正直一番つまらないリアクションなんです。
吉見:やっぱり海外の映画祭は違いますか?
清水:違いますね。韓国の映画祭ですら違います、一番近い外国だと思うんですけども違いますね。だからどうなんだろうと不安に思ったら、実はすごく喜んでくれてたりだとか。
吉見:特に笑いとかだったらまだわかりやすいですけど、怖いとか不気味っていうのはわかりづらいですよね。
清水:そうですよね。でもお客さんの中に紛れて自分が観にいったときに、前の席のカップルの椅子が「ガタン‼︎」って揺れたりとか、そういうのがあるとわかりやすいんですけど、怖さも笑いもそういうのばっかりじゃないじゃないですか。
吉見:そうですね。
清水:ひっそりクスクスくるシーンもあるし、ぞーっとしてるけどビクっ!てなるものばかりじゃないじゃないですか。そのお行儀の良さやお淑やかさというのか、感情を押し殺す魅惑の因子の連続だと思うので、それがこういう映画を作らせるセンスにつながっているので。そういう意味でいうとホラーって言えるのかわからないんですけど、日本のホラーとかスリラーとは(この映画は)違う感じありますよね。押し殺して押し殺してジワジワくる感じ。
吉見:難しいですよね。怖いっていう感情って、狙ってないところで怖がらせたっていうのはあるんですか?
清水:狙ってにところで…?
吉見:別にこの作品も怖がらせようって演出はないわけじゃないですか?
渡邉:そうですね。今作も怖がらせようとしたわけではなくて、自分もホラー全般好きなんですけども、びっくり系のホラーというか演出があんまり好きじゃないんです。なんか反則技な気がして。そんなの誰だってびっくりするやんと思ってまして(笑)
清水:やっと渡邉監督と共通点が生まれました(笑)音楽で盛り上げて、何かの視点が近づいて、ジワジワ、怖い怖い、来る来る、と思ってパッと振り返ったら友達でしたみたいな。あんな恥ずかしいことないですよね(笑)
吉見:でもその怖がらせ方が(日本のホラーの)主軸な感じがしますよね。それはあんまりお好きじゃないと。
渡邉:そうですね。それはもうだれでも怖がらせてしまうから、やりたくなくて。
清水:しかもどんな監督でもやろうと思えばできちゃうんですよね、僕もなるべくそっちにはいきたくないとむちゃくちゃ思います。
吉見:なるほど。
清水:でもそういうのばっかり求められちゃいますね。メジャー配給にとかに行けば行くほど。しかもお客さんはそういうのを怖いと喜ぶんですが、僕はそれはスケアリー〈scar〉ではなくて、ただのサプライズ〈surprise〉だと思います。でそれでいいんだったら、そういうのも入れてみるけど、やっぱり少し恥ずかしい(笑)
渡邉:そうですね。唯一サプライズっぽいところは母親が落ちてくるところであったりするとは思うんですけど、それでもなんというか、とんでもない音とかで驚かすのは避けました。
吉見:でもあそこは、お客さんに怖いって思わせたくって感じなんですか?
渡邉:そうですね。でもそれを真正面からやる勇気が無かったというか、それで怖がらんかったら負けた気がするというか(笑)自分としてはそこは少しズラした感じですね。
清水:あとずーっと意味もなく音を張り付けといてスッと無くすっていうのも不安になったりするんですよね。そういう音の演出もあって、渡邉監督はそういうことをシリアルにしているのかなと。
渡邉:そうですね。音楽も使ってないので。自分で言うのは恥ずかしいんですが。
清水:でもそれはすごいですよ。当たり前の音楽とか、そういうものを作らないで最低限の音とセリフだけでっていうのは。
吉見:それは監督的に試したかったことでもあるんですか?
渡邉:これは整音とか編集の段階で、「あ、これは音楽なしでもいけそうだな」ってなりまして。
清水:そうなんですね。最初から決まってたわけではなく。
渡邉:そうですね。最初はどっちでもいいくらいに考えてたんですけど、整音の時に色々と話し合いながらアイデアが出てきて。これは音楽なしでも持つ気がするなって話になってこうなりました。
清水:基本的に一つ一つの画に力があるので、渡邉監督がこのまま調子に乗って『サタンタンゴ』みたいな映画をね、何時間もある映画を作られたら、これはたまらんと思いましたね(笑)
渡邉:ありがとうございます(笑)でも僕はやっぱり映画において(上映)時間って大事だなと思っているので、あんまりそういう映画を撮ろうとは思わないんですけども、そう言われると一回試してみたい気持ちは出てきました(笑)
清水:ずーっと吉見さんがわけわかんないことを言って、逃げまくるみたいな(笑)
吉見:それいいですね(笑)私もやりたいです。
清水:俳優さんはね、監督の求めるものに応えていくことしかできない作品っていうのもあるわけじゃないですか。信頼関係もそうですし。
吉見:そうですね。
清水:でも意図もあって、信頼関係もあって作ったはずが、出来上がったらはちゃめちゃで、誰にも伝わらないっていうのはありますからね(笑)
吉見:ありますよね(笑)やっぱりこの作品も捉え方が難しくて、皆さん帰るまでには答えは見つからないけど持ち帰ってちょっと考えてみますみたいファンの方もたくさんいらっしゃるので。
清水:でも見つからなくていい気もするんですが…52分でしたっけ?
渡邉:52分です。
清水:そうですよね、それでほどほどに人間同士の関係性が無いわけでは無いから、もう一回見てみようかなって気にはさせると思うんですよね。
渡邉:なので完全に理解するとか、納得される必要はなくて、ただ体感として感じて欲しいなと。映画にしかできないというか、こう浴びるように映画を観る感じですね。そういう感じで見ていただけたらいいなと思いますね。
清水:だそうです(笑)
会場:(笑)
清水:ただこれ最初〈我がまま〉って入るじゃ無いですか、「あれ違う映画見に来た?」って思ったらタイトル出てきて、ああよかったってなりました(笑)
渡邉:あれは制作のロゴなので(笑)
清水:そうですよね。…そろそろ5分前らしいですが(笑)
吉見:そうなんです。そろそろ縁もたけなわな感じなんですが、清水監督から最後何か告知などありましたら。
清水:告知ですか。ありがとうございます。そうですね、僕最近結構いろんなインディーズ映画とかレイトショー系が多いんですけど、初めて観てトークって感じで呼ばれることが多くて。この劇場じゃ無いんであんまり大きな声では言えないんですが、今月別の作品でもあったりするので、もし僕の名前とか観て気に留めてもらえたら是非。あと来年まだ何月かはわかりませんが、今年撮影して仕上げた新作がありまして『忌怪島/きかいじま』という作品がございます。
吉見:それは村シリーズは完結して?
清水:村シリーズは(笑)完結かはわからないのですが3つやったので、三部作って言っていいのかはわからないんですけど、あれは終えたし違うのをと思って。ただ東映さんからは、「監督、次の島シリーズなんですけど」っていわれて(笑)誰がシリーズにするって言ったのかと、やめてくださいと(笑)
吉見:勝手に今、島3部作が始まったのかと思ってました。
清水:そういうことを最初に言っておきながら、1作目がヒットしなかったら途端にシリーズの話とかしなくなるのが大手・メジャーのやり方なので。そういうところはよく知っているので。だから発表の場では言ってないんですよ。なのに記者の人に、「監督、次の島シリーズなんですけども」と言われるんで、だから待ってくださいと(笑)あなたの4文字のカタカナで僕の次の仕事に影響するんですと(笑)
吉見:確かに(笑)でもそう思っちゃいますよね。今完全に次も島3つなんだなと勝手に思ってしまったので。
清水:ありがたいお話なんですけどね(笑)
吉見:ではそちらも今後情報公開がされていくと。
清水:渡邉監督はなんか告知あるんですか?
渡邉:そうですね。何回か言ってるんですけども、この『啄む嘴』がロサ以外でも上映が決まりまして、大阪のシアターセブン、名古屋のシネマスコーレ、広島の横川シネマですね。そこで2023年の来年に上映が決まっているので、また詳細が出たら発表できたらと思っています。
清水:なんか次回作の構想があったりとかは。
渡邉:構想はあるんですが、まぁいくつか温めていけたらなと。
清水:嘴シリーズいきますか(笑)啄むシリーズか(笑)
会場:(笑)
渡邉:ちょっと考えてみます(笑)
清水:吉見さんは何かありますか?
吉見:今月の21日に私が映画関係者を呼んで、その方の作品を上映して話を聞くということをやっていまして。「映画をテイクダウン!」というイベントなんですけども、それが今月の21日にありますので、詳細は私のTwitterを見ていただければと思います。あとこの作品を是非ちょっとでも気に入っていただけたら、SNS等で発信していただいたり、映画サイトとかに感想を書いていただけますと大変嬉しいです。はいということで、本日のゲストは清水崇監督でした。本日はありがとうございました。
2022.12.12
映画『啄む嘴』深田隆之監督トークショー 動画
劇場:池袋シネマ・ロサ
日時:2022年12月14日(水)21:00の回終了後
登壇者:深田隆之監督、渡邉安悟監督、MC:吉見茉莉奈(中島役)
映画『啄む嘴』深田隆之監督トークショー 文字起こし
吉見:皆さん、平日の夜遅くにたくさんのご来場ありがとうございます。逃げる女、中島を演じました吉見茉莉奈です。よろしくお願いいたします。では早速本日のゲストをお呼びしたいと思います。それでは本日のゲスト深田隆之監督と本作の監督の渡邉安悟監督お願いいたします。
深田:よろしくお願いします。
会場:(拍手)
吉見:では渡邉監督からも一言お願いします。
渡邉:今日はありがとうございました。監督の渡邉です。よろしくお願いします。
会場:(拍手)
吉見:簡単にご紹介させていただくと、深田監督は今年公開になりました『ナナメのろうか』という作品の監督にでして、今作と合わせて今年公開の中編映画で共に私がメインの役を務めさせていただいたというところで。
深田:そうですね。どちらも女性二人の作品で。
吉見:そうですね。改めて考えると共通点も多いという作品なんですけども。なんというか、「吉見茉莉奈という女優をめぐる鼎談」というすごいタイトルなんですけども、色々と作品の共通点もあり、色々とお話を伺えたらと思います。
深田:よろしくお願いします。
吉見:早速なんですけど、感想をいただければと思うんですが。
深田:そうですね。僕まず最初にスクリーナーで、いわゆるパソコンの画面で拝見させてもらって。で、今日スクリーンで見させてもらって、これが3回目になったんですけれども。単純に一番3回目がやっぱりスクリーンで見るというところで面白かったです。ただ皆さん、何回か見ている方もいらっしゃると思いますけれども、初めての方もいるで。一番最初に僕が印象に残ったのは、すごく感覚的な部分だったんですよ。というのは、例えばすごく具体的に言えば、吉見さんがめちゃくちゃ「こんな走れるんだす」と感じたりなんですね(笑)
会場:(笑)
吉見:そうですね(笑)
深田:ああいう奥行きがある道を走っている姿であったりとか。間瀬さんがタバコを吸っているその姿だったり。あるいは足についたすごく痛々しい傷であったり。
吉見:はい。
深田:あるいは足音。すごく印象的な足音であったり、そういう知覚的な部分が僕はすごく印象に残ったんですよね。やはりそれがこの映画はとても重要だなという風には思っていて、特に全体の7、8割を占めていてる夜のシーンというのは、映画の中ですごく面白いなと思ったんですね。というのはなぜかというと、はっきりと見える部分と見えない部分があるんです。
吉見:うん。
深田:夜というのは見えない部分の方がすごく多くて。顔もライトが当たったり、暗くなったりということもありますし、同時にこの映画は物語的にも見える部分と見えない部分があって。何だか見えない部分の方が多そうで、宙吊りになるわけですよね。
吉見:そうですね。
深田:だけれどもでこの映画が僕はとても好きだなと思ったのは、やはり観客に対していい意味でのチャレンジをしていると思ったんですよね。情報がないと観客は不安になるわけですよ。情報というのは、この人はなぜこれを知っているのか。この人の目的は何なのか。この次はどうなるのか。この人とこの人の関係は何なのかというのが宙づりになっていると、観客は不安になるんです。
吉見:そうですね。
深田:その状態をずっとでも維持し続けているということがやはり面白いし、それを宙づりにし続けると不思議なことに画面に集中するんですよ。画面に映っているものとか、あるいは聞こえてくる音というものに対して、ものすごく敏感になってくる。
吉見:はい。
深田:ある種の映画は物語というものをすごく説明して、もちろんそれはいいことだと思っているんですけど。この人はこういう理由がありますように、今こういう感情があります、この人はこう思っています、ということを観客に対して伝えていくんだけれども、同時に抜け落ちることもやっぱりすごくあると思っています。そして、それは言語化できない領域なんじゃないかと思うんです。ただ立っているとか、ただ走っているとか、そういうものというのは映画の中ですごく言語化できない面白さの部分だったと思うんですよね。そこに対してすごく集中して映画を作っていたんだろうなっていう勝手な推測をしたんですね。
渡邉:ありがとうございます。
深田:で、吉見さんも今日いらっしゃるので具体的なシーンからお聞きしたいんですが。コンビニの前で初めて母というか、過去のことを支離滅裂に話し始めるというシーンがあるんですね。そこでまずガラス越しに吉見さんが映っていて、その後独白みたいなことをするときにも、ガラス越しに鏡みたいな形で映って。そこで僕はカメラの方を向いている様に見えたので、あのときって現場の芝居的には間瀬さん(矢崎舞役)の方に視線が向けてたんですか?
渡邉:いや、あれは視線は向けておらず、「カメラを見て」くれでしたね。
深田:やはりあそこの鏡像というのは、すごく意識されてたんですか?
渡邉:個人的に鏡を使った演出が好きなので使っている部分も多いんですけど、僕の中では物語というのもあるんですよ。
深田:はい
渡邉:その物語に沿って、ここでは鏡が必要かなというので、ちゃんとお話にのっとって演出しているつもりなんですけど。
吉見:ちなみなんですけども『ナナメのろうか』ってご覧いただいたことある方はどのくらい?(手を上げる)あ、結構。ありがとうございます。『ナナメのろうか』でもね、鏡越しのシーンがあったりして。何かそういう引っ掛かりですか?
深田:そうですね。鏡もまた夜と同じぐらい重要だと思うんですね。鏡って結局虚像というか実像ではないという。だからなんでコンビニの前のシーンを言ったかというと、あそこでいわゆる実像の吉見さんがただ過去のことを話しているというのを見るのか、鏡に映った吉見さんが話しているのを見ているのかというのは全然違うと思ってます。
吉見:なるほど。
深田:鏡の像だからこそ、この人が果たして何者なのかというところに緊張感が出てくるというのはあるなと思う
渡邉:あれ実は現場でどちらとも撮っていて、そのままで撮ったカットと、鏡越しのカットと撮ってあります。で編集している時に、これは鏡で撮ったカットだなと思ったんです。感覚的にこっちでないと駄目だなって思って。本来なら語れば語るほど過去についてわかっていくと思うんですけども、語れば語るほどわからなくなっていくということをしたくて。
深田:なるほど。
渡邉:やっとしゃべってくれたという安心感はあるんですけれども、話せば話すほどこの物語は何なんだろうというところに進んでいくイメージですかね。
深田:あの後のカットもね、バックミラーに映った吉見さんのカットが入っているというね。やはりここでも鏡がその重要な役割を果たしているのが感じました。あともう1個、夜から昼に行くというのも面白いですよね。
吉見:『ナナメのろうか』では逆ですもんね。
深田:昼から夜ですもんね。明るい場所で全てが明るみに出ている、関係性も全てわかっている状態からすごく抽象的な世界に入るんですけども。この作品は昼の部分もすごく面白いんですよね。その面白さって、闇の中に隠されていて何か分からないところから、(謎男との)対決となるんじゃないですか。あれがほんと西部劇みたいな対決だから(笑)
会場:(笑)
深田:それで僕が昼間のシーンになってすごい良かったのが、間瀬さんが普通に立ってて、謎男がフレームの外に行って、そこに吉見さんがすっとフレームインしてきて、同じものを見る。ここでやっと同じものを見たんだと思って。なんかすごい妙な爽快感を感じて。あの構成というのは、最初の段階から構想されてたんですか?
渡邉:どちらかというと、僕の中では”ガソリンスタンド”で同じものを見るという風に考えてました。あそこで彼女の言っていたことは本当だったんだって、僕はしたかったんですね。ただ見ている人の感想を聞くとそうはなっていないっぽいんですけど(笑)
吉見:どっちかというと やっぱ昼間になってから一緒に見たっていう感じがありますよね。よく考えるとガソリンスタンドで会っているんだけど。「犬見ませんでしたか?」って言われたんだけれども。確かにです。確かに。
渡邉:意図と違うところで、そういうのが生まれている。
吉見:なるほど。
深田:あそこ間瀬さんと謎男は目を合わせているけども、吉見さんは隠れていて、サイドミラーから見ているので、その視線の交差する方向が昼間のシーンと少し違うんですよね。
吉見:確かに。
深田:現場はどんな感じだったんですか?
吉見:現場は『ナナメのろうか』の現場のお話にもなるんですが、真逆だったんですよね。何か『ナナメのろうか』の方は本当にずっと監督と撮影前から1週間ぐらい稽古という形で、私ともう一人の共演者の方と監督で3人でずっと一緒にいて、いわゆる本読みというよりはいろいろ話しながらコミュニケーションとって作品作りを進めていたんですけども。何か逆に『啄む嘴』の場合はオーディションから撮影までそんなに時間がなかったんですけども、もう監督ともコミュニケーションあんまり取らず、作品についても私が解釈したそのままの状態を崩さずに持ってきたかったので、それもあってあんまり余計な情報を入れたくなかったというのがあって、監督にも深掘りして聞くこともなくそのまま撮影に臨みました。撮影中も本当にコミュニケーションを取れるのは、何かカットかかった時に監督が暗闇の中からすっと現れてボソボソっと「こうしてください」って言って、また暗闇にすっと消えていくみたいな(笑)なので現場でも必要なコミュニケーション以外はあんまり取らずに。それがこの作品にとって必要だったんですけど。あと、『ナナメのろうか』の方は基本的昼間の撮影でしたし、逆にこっちは基本的には夜中の撮影で。面白いことに全く対極の作り方をされていたなっていうのを今改めて思いますね。
深田:なるほど。それは渡邉監督は普段からというか、前の作品とかもあると思うんですけど、基本的にできるだけ言葉をそぎ落として伝えるような感じですかね。
渡邉:僕はキャスティングに結構時間かかっちゃうので、キャスティングの段階で大体終わっていて。現場では本当に簡潔に動線とか、ちょっと気になった時に流れとかも含めてとか、それぐらいで。簡潔に伝えていく感じですね。(オーディションで選んだ)好きな俳優さんがすでに揃っている状態なので。ただずっとそういう憧れはあります。クランクイン前からずっと稽古してみたいな。でも自分にはできないなと思って。そこはこっちにしよう、こういう演出にしようと思って作ってます。
深田:まあ、どちらがいいとは言えないんですよね。その人のやり方しかないと思います。
吉見:面白いですよね。同じ映画だけどこんなに違うっていうのが。何か『ナナメのろうか』が去年の3月ぐらいで、年末にこの作品(『啄む嘴』)があって。全然真逆の現場に行ったというのは、個人的にすごく面白くて。『ナナメのろうか』の経験もあってこれはチャレンジしたっていうところがありました。何かキャラクターとかは全然違うんですけど、『ナナメのろうか』があったからここに繋げられたと思うので俳優としては、何か面白いです。
深田:あえて聞きたいんですけれども、キャスティングがほぼ全てという。それによって映画の方向が決まるのは確かに本当そうだなと思うんですけど、吉見さんをオーディションで選んだというのは、どういうところだったんでしょうか?
渡邉:いっぱい理由はあるんですけど。そうですね。元々、この中島というのがもうちょっと小柄で可愛らしい少女みたいなイメージだったんですけど、吉見さんと(オーディションで)会って長台詞を演じてもらって、全然イメージとは違ったんですけど、すごくいいなと思ったんですね。感覚的に。とても心地良かったというか。あと自分のキャスティングでは声をすごく重要視してるんですが、すごくいい声をしていて。結構悲惨な役柄で色々不幸な目に遭うという時に、吉見さんの心の強さというか、この人はどれだけ不幸が目の前にあっても立っていられるみたいな、そういう強さを感じたので、映画を見ている人も、この人が主演なら最後までついていける、というところがあるのではないかなと思いました。あとちょっと現場の話をすると、もうすでに間瀬さん(矢崎役)と豊田さん(謎男役)のキャスティングが決まっていて、どちらもすぐ決まったんですけど。どちらの方も僕と同じで結構マイペースな印象があったので、現場のことを考えた時に、吉見さんはすごく気を遣える方だなと(笑)
会場:(笑)
吉見:何かすごい面白いかったですよね。オーディションが何かこうあれじゃないですか、渡辺監督ってこうあんまり何か私の印象ではやっぱりね、映画の構造的なものだったりとか、画的なものっていうのはすごく興味があるって印象はあったんですけど、あんまり私のパーソナリティー、個人的なことには興味ないのかなって最初勝手に一方的に思っていたんですけども。ただオーディションは結構内面のことを色々聞かれたのですごい意外で。何かそういうパーソナルな部分を聞いてくれるんだなと思ったら、何かそれもキャスティングの理由の一つって聞いて。
深田:そういうこともあったんたですね。
渡邉:横顔が好きで。吉見さんの。それは間瀬さんもどっちともそうで。横顔というのは結構大事にしますね。
深田:結構カットありましたよね。横顔の。
渡邉:そうですね。
吉見:横顔まで見られてるとは思いませんでした。
深田:それがこの映画の面白さに繋がっているなと思いますよね。やっぱ「何かいい」ってあるじゃないですか、映画って。
渡邉:多分この映画って「何かいい」の積み重ねだと思うんですよね。
深田:この人の顔横がいいとか、声がいいとかって言語化ができない領域にあるんですよね。物語の理解というものが単純に渡邉さんの中ではしっかりにあると言っていたと思うんですけど、やっぱり僕も追いつけない部分がやっぱりあったって。だけどそのその面白さの部分というのが言語化できる面白さなんです。物語として、これがこうなって物事の関係性がこういう風に変わって、実はこういう人たち、この人たちにこういう理由があったのか、そういうものというのは、今言葉で説明できる面白さが連なってあると思うんですけど、だけどやっぱり渡邉監督のフォーカスしている部分というのが横顔がいいとか声がいいとか、これってすごく言語化できない、とてもしにくい部分だと思うんですね。で、やっぱり僕が一番最初に見てただ車のヘッドライトとか動いているのが面白いとか、吉見さんの顔とか、間瀬さんの立ち姿とかに目がいったってのは、やっぱり言語化できない所の部分で。その面白さというものをちゃんと感じさせてくれるのが面白いなと思ったんです。
吉見:嬉しいですね。
渡邉:そうですね。自分の映画には共通して言語化ができないところに持って行きたい。そういうエモーションみたいなものを描きたい。どの映画も共通して意識している部分ですね。
深田:そうですよね。
渡邉:解からなくても面白いというところにいけたら。
深田:画面を見て欲しいし、音を聞いて欲しいし。物語ってやはり色々なものであるじゃないですか。漫画でもある、演劇でもある、小説でもある中で、映画でも幾つかあるんだけども、映画だけができる表現って何なんだろうっていうのは考えてしまうというか。そこがすごいシンパシーを感じる部分でもあります。
吉見:でも本当に何か結構違う話というか、雰囲気とかは『ナナメのろうか』も『啄む嘴』も全然違うと思いつつ。結構私はよく考えてみると、何か根っこの部分でちょっと通じ合う何かがある気がして。やっぱりこの作品も、私は何かこう何度か改めて見ていると、やっぱり根底は人を描いているというか。やっぱり二人の関係性を描いている気がしているんですけど。『ナナメのろうか』はまさにそれを稽古段階から積み上げてやったなという気がします。ただ根っこの部分は一緒なんだけど、ただ何かやり方とか撮り方でここまで表現が変わるというのがすごく面白いなと思います。
深田:吉見さんの話で言うと、振り向くカット僕も撮ってるんですよ。
吉見:ああ。
深田:何か振り向くカットすごく面白いんですよね。何でしょうね。
渡邉:振り向き方とか。
深田:そうそう。そうなんですね。
渡邉:何でしょうね。
深田:本当に同じようにフレームインして振り向くのを撮っていて。
吉見:それは現場でそれをやろうと思ったんですか?それとも元々?
深田:高速みたいな道路でやってますよね?
渡邉:道路もあるし、何回かありますね。その動作が映画的に好きというか。
吉見:では現場の前からここはこれで行こうという風に考えて撮ったと。
深田:僕の時は庭みたいなところで撮ってた時にその動作をしてもらったんですけど、やってもらってから何か面白いなって感じですね。
吉見:そっかそっか。
深田:そういうプランがあってとか、そこを事前に見抜いててとかそんなんではなく。画面に映すととても面白いですよ。これまたね言語化できないですけど。ちょこちょこ取材があると言ってるんですけど、視線がすごく面白かったんですよ。吉見さんの目の強さっていうか。こうやって対していると、そこまで大きく感じないけど、画面に視線がぐっと移った時に強く感じる時があったんですけど。でも今回もそういう感じの視線を意識して演出していたような気もしたんですけども。
渡邉:そうですね。全体を通して視線の演出というのは意識してましたね。
吉見:そうですね。視線は何か一番、いや一番ではないんですけど。何か色々ここを見てこうみたいなものは。
深田:結構細かく?
吉見:そうですね。謎男の部屋から脱出して走り出すところがあるんですけど、その時に階段降りてきて立ち止まるんですね。その時に何かここら辺(下の方)を見てから走り出すみたいな。いや違うな。上見て、ここ(下の方)を見て走り出すんですね。で何かそれを私はあんまり意図が、どういう意図でこれを見ているのかはあんまり(理解せずで)。というよりは、監督がそれでという感じだったんですけど、もう何か(映像を)見てみたらいいなと思って。
深田:視線って難しいですよね。
吉見:そうですよね。あれは何かよく(監督が)わかるんだなっていうのはちょっと思います。ここを見て、こうみたいなのが。
渡邉:そうですね。今言われた思い出したんですけど、撮影もだいぶ前なので忘れてことが多かったんですけれども、そうですね。視線は確かに結構言っています。ここ見てというのを全員に言っていましたね。
深田:もうここを見てから次こっち見てことまで言っていた感じですか?
渡邉:今までの映画だと人を動かしてという演出が多かったんですけど、今回車内のシーンが多かったり、足を怪我していたりというのがあって、そういうのを禁じて今回は撮りました。体が動かせないなら、別のところで何か動かせないかっていうので、視線だったりとか、カット割だったり、車だったりとか、そういうところで何かを動かすというか、アクションというものを意識しました。
スタッフ:(そろそろ残り5分を切っているので視線の話は次のイベントでお願いします)
吉見:あ、あと5分ですか。では最後に深田監督にお聞きしたいんですが、『ナナメのろうか』もそういう意味では制限されたと思うんですよ。ほとんど家の中で。
深田:そうですね。
吉見:そう廊下とか。ですごく何かそういう意味では制限された環境という中で、何か撮ってたと思うんですけど、やっぱそういう制限された中でも、こういう形で撮ってるというのは何かこう考えて、楽しんで撮ってた感じですか?
深田:そうですね。僕の場合(『ナナメのろうか』の場合)一軒家だったので、一軒家でどのぐらい面白くできるのかというところはやっぱりありましたね。だから車があるとか足を怪我しているとか、そういう制限としてのフレームがあるからこそ、ここしかカメラを置けないよねとか、これしかできないということが出てきて、逆にそれが面白く映画をしているというのは『ナナメのろうか』も一緒かなと。
渡邉:(『ナナメのろうか』は)そういう制限を観客に伝わらない部分で、すごく課して撮っている作品だなと思います。いろいろなところで戦っている人だなと。
吉見:でも何かを制限されると狭まりそうだけど、逆にそれが面白くなる要因になる。
深田:むしろ面白くなる可能性の方が大きいんじゃないかなと思います。
吉見:なるほど。面白い話でした。もうちょっとそんな感じで、そろそろ時間ですね。深田監督最後になにか告知がありましたら。
深田:はい。その『ナナメのろうか』というのが来年の1月7日から菊川という東京の東側にあるストレンジャーというすごく新しい映画館で上映になります。ちょっと回数がちゃんと分かってないんですけど、2022年の映画の特集で傑作選という感じでやっていただけるということなので是非。で8日に舞台挨拶みたいな形で出演者の方とご登壇がありますのでそちらも是非。(https://stranger.jp/movie/509/)
吉見:渡邉監督はなにかありますか?
渡邉:ちょっと難解という風に言われることがあるのかなと思って、感想的に。でちょっと考えたんですけれども、矢崎と中島二人の話に集中してみたら、輪郭が見えやすいのかなと思ったんですね。必死に何かを切実に訴えている女性がいて、その傍にただ居てあげる。その言葉は理解していないかもしれないけど、そっとずっと傍にいて、ただただ抱きしめるというか、そういうところの二人の関係性みたいなものに集中して観るのも一つの手かなと思っています。
吉見:いろいろな要素があるかないというのを考えちゃうと思います。実際考えてみたら、すごくシンプルな話なんですけど、考える楽しみもあるので。色々な捉え方はありますけれども、ぜひ持ち帰って色々考えてくれたらすごく嬉しいので、考えてもらってTwitterとか映画サイトとかで書いてくれたら、毎日検索してますので。お待ちしてます。
スタッフ:(2週目の告知もお願いします)
渡邉:はい2週目ですね。17日と18日が19:40分からの上映で、19日から23日が19時15分からの上映になってます。
スタッフ:(イベントの告知もお願いします)
渡邉:はい。19日と21日にはイベントも予定してますので是非。
吉見:で、23日が最終日なので、本当に今のうちにわかんない方はちょっともう一回とか観ていただくと。ずっと分からないかもしれないですけど。なんかね。もう一回見ると考え方、価値観が違って見えるなという気もするので、良かったら足を運んでいただけたら嬉しく思います。
渡邉:はい。よろしくお願いします。
吉見:大丈夫ですかね。はいではというわけで深田監督本日はありがとうございました。
深田:ありがとうございました。 吉見:みなさまもありがとうございました。
会場:(拍手)
2022.12.14
映画『啄む嘴』撮影秘話 動画
劇場:池袋シネマ・ロサ
日時:2022年12月19日(月)19:15の回終了後
登壇者:渡邉安悟監督、吉見茉莉奈(中島役)、間瀬永実子(矢崎役)
映画『啄む嘴』企画製作秘話 動画
劇場:池袋シネマ・ロサ
日時:2022年12月21日(水)19:15の回終了後
登壇者:渡邉安悟監督、山岸佑哉(プロデューサー)、深井戸睡睡(共同脚本)
映画『啄む嘴』企画製作秘話 文字起こし
渡邉:今日はちょっと映画作りについての企画開発秘話だったり、そういうところをプロデューサーの山岸さん、共同脚本の深井戸睡睡くんと3人で話せたらいいなと思います。よろしくお願いします。
山岸:よろしくお願いします。
山岸:実は何ですけど、僕深井戸くんと脚本家としてちゃんとお話しするのは初めてなんですよね。深井戸:そうですね
山岸:制作部として現場にちょこっと入ってくれてたりとかあって。そこでちょっとお話ししたりとかはしたんですけど、脚本家としてお話しするのは初めてなので、色々とお伺いしたいなと思います。
深井戸:わかりました。
山岸:ちなみになんですけれども、共同脚本でどういう風に作っているのかなと思ってまして。二人で作っている形にしても、話の大筋とかプロットとかどういう風に考えて作っているのかなっていうのをお聞き握したいなと。
渡邉:まず企画とプロットを僕が作ったやつを見せて、それを参考にして(深井戸くんに)書いてもらってって感じですかね。概ねプロットとしてこういう話の流れにしようというところを作って、それをお渡しして書いてもらってみたいな流れで。
山岸:なるほど。基本的には深井戸くんが大筋を?
深井戸:そうですね。実際に指を動かしてるのは僕です。まずプロットを見た上で、何となく脚本を書いて(監督に)見てもらってって感じで。で、電話とかで「ちゃうやんけコラ」って言われる感じですかね(笑)
山岸:なるほど(笑)その上で、細かい修正が監督から入るというわけですね。
渡邉:そんな言い方はしてなくて(笑)仲良くやらせてもらってますけどね(笑)
深井戸:細かくこうしたいとかっていうよりは、もう少しこんな要素を入れたいとかそういった要望に近いのが多いですね。
山岸:そうなんですね。
深井戸:テレビが山積みになっているシーンとか、あれはほんとに脚本としては後半に入ってきたので。色々と「こういう要素が欲しい」とか「こういうシーンが欲しい」と言われるんですけど、渡邉さんに言われた通りだけで書くのは嫌なので、作品のモチーフになってる〈オオハシ〉とかは僕が勝手に付け加えたりした物ですね。
山岸:そうなんだ。〈オオハシ〉なんて作品の中でめちゃくちゃ重要な要素だけども、あれは渡辺さんから、そういうプロット出した訳ではないんですね。
深井戸:渡邉さんからのプロットって物語とかにもなっていなくて、箇条書きでいくつか「こういう場面」みたいなのをまとめて物語にしていくみたいな感じなんです。
渡邉:何かこう、コンテを書いてる感じなんですよね。字コンテというか。深井戸:それを一個のストーリーにまとめ上げていく感じですね。
山岸:なるほど。
渡邉:こういう人を描きたいとかっていうのも、思いついたものを渡して書いてもらってます。
山岸:確かにそういえば僕と最初に会って、「どんな映画作りたいですか?」って聞いて答えが「家を燃やしたいです」でしたもんね(笑)渡邉:家を燃やすのは元々別の企画でして(笑)それも深井戸くんと作ってるんですけどね。
深井戸:そうですね(笑)
渡邉:その要素もこの作品には活きてますね。
山岸:なるほど。あとこれは個人的にずっと聞きたかったことなんですが、今回ロビーで販売されているパンフレットには脚本の第4稿が掲載されているんですけれども、その脚本の中で登場人物の女性二人の名前が苗字で書かれてるんですよね。オーソドックスな脚本って女性は下の名前で「あゆみ」であったりとか「ミキ」と書かれていることが多くて、男性は苗字で書かれていることが多いんですよね。暗黙のルールというか。今回の脚本で女性主人公を二人とも苗字でしか書かれていないことには、なにか意図があったのかなと。
深井戸:そうですね。ちょうどたまたまツイッターで何か脚本のことについて、男は苗字で女が名前みたいなもので、これそもそもそれ(性別)で分けているのっておかしくないというのを見たんですよ。それを見て確かにそうだなと。みんな人間でいいと思ったんです。僕はそれを読んでからは性別関係なく全部苗字にして、子供だけ名前にしています。そしてそれが本当に通用しない時に、例えば苗字がほとんど使われいないのに名前を呼ばなければいけない時とか。そういう名前だけの時とかは片仮名で、名前だけのキャラクターにしたりしてます。
山岸:何というか、性別というのを文字情報の段階で意識したくない感じかな。
深井戸:そうですね。全員映画の中に描かれる人物なので、そこを隔てる必要ないかなと思っていて。でも本当のことを言うと、、、たまたまです(笑)すいません(笑)
会場:(笑)
山岸:でも、そういった情報(性別で表記を分けるという)もあったから、それが反映されてると。
深井戸:それもありますし、何回か書き直していくにつれて、途中で渡邉さんから今のキャラクターの名前に変わったんですよ。渡邉さんから指摘されて。それへの反発もあるかもしれないです。何でやねんと(笑)何か僕がすっと入り込めなかったんです。僕は自分の作った名前で愛着を持って書いたので、それが中身一緒で完全な他人なわけじゃないですか。それを受け入れるのが難しくてというのがあったかもしれない。
山岸:確かに。仮の名前であっても、それでずっと進めていたらと書いている本人からすると、もうそれがそのキャラクターの名前になっちゃう。
深井戸:僕のを生んだかわいい子たちをね。なんか「親別だったんだ」みたいなのちょっと悲しい。
山岸:自分的に愛着持てなかったのもあってというか(笑)
深井戸:そうですね(笑)映画自体もそうですけど、かなり他人事の映画ではあるじゃないですか。それもあったかもしれないです。ちょっとこの人物達と他人行儀にならないと書ききれない気もしたんで(笑)だってあんなやつに感情移入できないでしょう(笑)ほんとに何言ってるかわからないし。
山岸:書いてる本人がそう言うんだったら誰もわからないよね(笑)
深井戸:(笑)
山岸:ちなみに何ですけど、渡邉監督が今回の映画においてでもですし、深井戸くんが今作の脚本を書くにあたって、こういう作品が参考になっているとか、影響を受けているものとかあったりするんですか。
深井戸:ありますね。
渡邉:アイデアとかは実際の経験からという感じなので、参考にした作品はあまりないんですけれども。演出する上では何人かいまして、ヒッチコックであったりというのは特にこの作品を撮る前に色々見てハマった感じですかね。
山岸:元々渡邉さんはヒッチコックお好きだったと思うんですけど。
渡邉:元々好きだったんですけど、この作品撮る前に急にさらにハマってしまって、さらに影響を受けたと思ってます。
山岸:深井戸くんは?
深井戸:元々僕が渡邉さんホラー似合うんじゃないですかというところから、じゃあホラーっぽいものでやってみようかってなったんです。僕身体の全身にホラーが流れていて、生まれた時に最初話した言葉ははホラーみたいな。365日とホラーしか食べてないですし。
会場:(笑)
深井戸:その上で自分のホラー論を考えた時に、お化けが出ると正直もう好きじゃないというか。お化けは出したくないなというか。何かもっと現実をぐちゃ~っとねじ曲げたいなというのがあって。
山岸:なるほど。深井戸:あと怖い話を人から聞き集めるのも好きなんですよね。それでいろいろ聞いていくうちに〈魔界〉へ行った人とか知り合いに居て。
山岸:知り合いに?(笑)
深井戸:大学時代にバイトしていた先の先輩が魔界に行ってるんですよ(笑)本当の話なんです(笑)
山岸:はあ(笑)
深井戸:ワクワクしません?
山岸:まあ(笑)
深井戸:そういう話をずっと集めている時、ツイッターで「蛇囚人」って方がいるのご存じですかね?
山岸:いや(知らないです)
深井戸:蛇囚人とか、肉塚斬首之介とか、TWITTERで怖い話を書いている人がいるんですよ。この人の話がやばいんですよ。本当にその現実がどんどんどんどんグチャグチャになっていくんです。そこに描いているイカリングの話っていうのがあるんですけども、それは原案に近いところがあるかもしれないです。蛇囚人本人がタクシーに乗って、そのタクシー運転手とお話しされるという内容なんですけれども、全部実話みたいな感じで。実話かどうかはわからないんですが。これがとんでもないんです。本当にちょっと皆さん怪さのあまり寝れなくなるかもしれないですけれども(笑)
山岸:なるほど(笑)あとはちょくちょくトークショーでも話しているんですけど、「犬見かけませんでしたか?」っていう冒頭のシーンは渡邉さんが実際に経験されてるんですよね?
渡邉:そうですね、普通に一人で夜歩いていたら、目の前に車止まって。「この辺で犬見かけませんでしたか?」ということがであって。その人は本当にただ犬を探しているだけの人だったと思うんですけれども、その犬って何だろうと考え始めて、そこからちょっと色々な想像が膨れ上がってというのが、僕の中のきっかけですね。
山岸:本当に「犬見かけませんでしたか?」って言うのは怖い話らしくて。僕の知り合いに別れさせ屋の仕事をしていたことがある人がいるんですけども、その人の使う手口としてターゲットの男性に犬のリードを持って「犬見かけませんでしたか?」って近付くらしいんです。それで見つけたら連絡くださいと言って連絡先を交換して、後日無事見つかりましたっていう連絡からお礼も兼ねてご飯でもどうですかっていう、相手との心の距離を縮める道具として使われるんですって。そう思うと、あんな謎男が「犬見かけませんでしたか?」って近づいてくるのはすごく怖いですよね。
渡邉:そうなんですね。じゃあ僕に来たのもそうだったのかもですね(笑)
深井戸:誰かと別れさせかけられたんですか?(笑)
渡邉:そうかもしれないですね(笑)山岸さんから、その話は初めて聞きました。
山岸:映画を見に来てくれた方の中にそう言う方がいたんですよね。それでそんな感想を言ってもらえたのでびっくりしました。
渡邉:そうですね。
山岸:まぁ話しは変わるんですけど、プロデューサーとして僕が動くのって今回が初めてでして。実際何て言うのか、渡邉監督の何がスゴかったかというか、なんで渡邉さんと一緒にやろうかって思ったかということをお話しできたらと思うんですけど、このロサで見た『ドブ川番外地』という作品の予告編が一番のスタート地点なんですね。その時から思っていたことなんですけれども、まずぱっと見た時のエネルギーがすごいというのが一番にあって。それに加えて、今作は音楽が一切使われてない作品なんですよね。カメラワークと絵作りというところの緊張感だけで、作品として52分成り立たせている。それはなかなか今の日本の若手の監督の中でもできる人ってそんなにいないんじゃないかなっと思っています。ただストーリーを追いかけるだけではなく、【映画であることの意味】をすごく持っている人だなって思ったんです。
渡邉:ありがとうございます。
山岸:僕は【映画】に関わっていきたいと思っていたので、だったら【映画であることの意味】がすごく高いところにある渡邉監督と一緒に何かを作りたいと思った訳なんです。ただ現場でも大変なことはたくさんあって、深井戸くんからは「渡邉さんは、人間三ヶ月なんで。生後三ヶ月くらいの人と思って接してあげてください」って言われてたので、「なるほど」と思いつつも、何か作業をお願いするとすぐフリーズしちゃうんですよね(笑)
深井戸:今もMCやるっていって段上上がったのにね(笑)
渡邉:すいません(笑)
山岸:というようなねまだまだすごく未熟なところがあるなと思いつつも、ただ映画を作ってやっていくとか、集中力とか構成力とか、そういったところではもう本当にすごくて。こんな映画になるとは思っていなかったというぐらい、僕自身は感動しています。本当は深井戸くんがいなかったら、もっとプロデュースのところとか企画のところのお話をしたかったなと思っていたんですけれども、実はそれってパンフレットをロビーで販売されているパンフレットにドキュメンタリーという形で、僕が書いてある記事があるので、もしよかったらそっちの方を見ていただけたらもう少し詳しく、この映画を作るに至った経緯であったりだとか、僕はどういう思いでいたのかとか、そういったところをちょっと知っていただけるかなと思います。なので、もしよかったらぜひパンフレットを買っていただけたらうれしいですね。
渡邉:そうですね。そろそろ時間が迫っているので、ちょっと最後にちょっと一言言わせて頂きたいんですが、ちょっと不思議な映画だと思います。ただ、主人公お二人の中島矢崎二人の関係性に絞ってみたら、より輪郭がはっきり見えてくるのかなという風に思います。いろいろな見方ができると思うんですけれども、お客さん一人一人に見方があると思うので、それぞれの『啄む嘴』があると思います。いろいろな解釈ができると思うので何度でも見れるというか。何度見てもいろんな発見があったりする映画だと思うので、あと二日しかないんですけれども、23日までですね。上映時間は連日、いまと同じで19時15分からになるので良かったら是非また観て頂きたいなと。また賛否全部受け止めるのでSNSとかでも感想など言っていただけたら嬉しいなと思います。ちょっと今日緊張して全然思った通りに話せなかったんですけど、前回とかもうちょっとうまく話したんですけど、今日はありがとうございました。
会場:拍手
山岸:じゃあ深井戸くんは。
深井戸:今日は吉見さんじゃなくて本当にすみません(笑)なんか知らん男が来てしまって(笑)そうですね、好きな見方をしてもらうのが一番いいですかね。僕なりの理論はもちろんありますけど、そんなものはただの僕の理論に過ぎないので、見ていただいている方一人ひとりの物語を作ってくれるのが一番うれしいです。というか何かこれはこうでって決められるよりは、そういう見方はなかったなというのに気づかされる報告が僕は楽しいです。結局本当に僕ができるところって文章の中しかないので、それが絵になった時にこうなるんだなと。しかもそれを見た人がこうなるんだを知れるのが一番楽しいので。それで僕は映画を作って楽しいなと思うところです、なのでもう深井戸睡睡はバカだとか言ってもらってもいいですし(笑)そしたら何か頑張ろうと思うし。はい頑張ります(笑)
山岸:ありがとうございました。
山岸:あと池袋シネマ・ロサでは渡邉さんも言った通りで2回でして。一応来年度には地方での公開もあるんですけれども、ぜひまた東京に戻ってきて、多くの人に見ていただきたいなと思っています。やっぱりなんですけれども、インディーズとか自主映画を作っていて、僕はお金が稼げないというか売り上げが出ないというところをすごく残念に思っています。何としてもやっぱり渡邉安悟に映画で稼いでもらいたいです。僕は彼が映画で稼げないんだったら個人的にすごく残念なんです。こんなすごい人が映画で食べていくことができないんだというのがすごく残念なので、僕も頑張って宣伝してちょっと少しでも多くの人に見てもらえるようにしたいなと思っているので、本日来ていただいている皆様だけでも渡邉安悟を応援していただけたらなと思っています。何卒よろしくお願いします。
2022.12.21